今回の合宿は、岩手県内で場所を変え二部構成で行いました。前半は社会人団体や他大学と合同で測量と、地元で開催されている氷筍まつりへの参加、後半は洞窟探検というフルメニューです。今考えると、1年間でやってきたことの総集編みたいな年度末らしい活動でしたね。期間も長く、活動内容すべてを書くとだらっと長引いてしまうので完全に独断と偏見で印象に残った出来事をご紹介します。
前半戦
岩手県久慈市山形町の内間木洞に入洞。前日に別の洞窟で測量をし、この内間木洞には前述の氷筍まつりに参加するということで入ってきました。私たちが洞窟内で活動する際はツナギを着たりやたら明るいライトを頭に着けたりと大騒ぎですが、この氷筍まつり自体は、入口付近の氷筍のきれいな場所に限ってヘルメットにジャケット、手持ちの懐中電灯だけで誰でも洞窟に入れます(氷筍まつり期間限定で、それ以外の時期は公開されていません)。
経験豊かな先輩ケイバーの先導で観光客用の投光器の脇をさっさとすりぬけ、最初のうちはずいぶんと広くて進みやすい洞窟だなあと油断していたら、行く先にぽっかりと巨大な穴が。あえて正確にではなく感覚的に説明すれば、五階の高さから見下ろしている気分でした。実際にはそこまでの高さはないのですが、洞窟内の、暗くて静まり返った独特の雰囲気と、今からこんな細いラダー(はしごのようなもの)でその穴の中に降りていかなくてはならないという状況が手伝ってかなり大きい穴に思えました。先ほどから簡単に穴、とだけいっていますが、その形は細長く、向こう側にはまた別のラダーがあってそちらが進行方向なので、道の途中が何かの間違いでスコーンと落っこちてしまっているようでした。周りは皆平気そうにしていたので、動揺を悟られまいと思っていたら、前日のミーティングで知らされていたようです(そのとき私は疲れて夢の中でした)。こんなに驚いたのは私だけです。
ラダーへの負荷、落石などの危険を考え、一人が下りて向こう側のラダーにたどり着いたらようやく次の人が下り始めるというシステムでした。自分の番になり、最初穴に背を向けて後退りしているときこそ若干怖かったものの、あとはゆっくり手足を動かすだけ。それまでは洞窟内であれほどの大空間に遭遇することもなく、ましてやラダーで降りたりなんて初体験だったので、とても印象に残りました。
この巨大な穴を通過し、ある地点で引き返したあとは同じ洞窟の別の場所で、社会人のケイバーの方に二次生成物の紹介をしていただきました。二次生成物といえば鍾乳石が有名ですが、今回はヘリクタイト、ムーンミルクなどを見せていただきました。ムーンミルクというのがまた不思議なもので、その場にいたほとんどの人が初見だったのですが、岩から生まれるのにやわらかいんです。岩壁にへばりついているんですが、作りかけのチーズに似て、白くてもにゅもにゅと粘度がありました。どうしてできるのかははっきりとはわかっていないそうです。
初日の測量、最終日に参加させていただいた氷筍まつりの打ち上げなど盛り沢山だった前半戦。みんな口々に「もう一週間合宿した気がする」とのたもうておりました。でもまだ二泊しただけ。というわけで所は変わって合宿は続きます。
後半戦
同じく岩手県、上有住。観光客向けの滝観洞(ろうかんどう)の他にも広大な地下空間を誇る地域です。私たちにとっては何度も合宿で訪れる馴染み深い地域でもあります。先輩のあとについてのほほんと入った場所であり、いつか後輩を従えていく場所でもあります。よって今回の合宿のメインテーマの1つは現1年が洞窟内の道を覚え、案内できるようになることでした。これがなかなか難しい。なんの規則性もないインクのしみを覚えるのと一緒で、できる人はできますが…同じ場所に同じ岩があったとしても、行きと帰りで全く別の場所に見えることもあれば、よく似た場所が何か所もあったりして、なんとも覚えづらい。そんな中で個性あるポイントは名前がつきます。道を覚えるのにも会話にも便利です。「あそこで待ってる」なんて言われても訳がわかりませんが、「石筍の間で待ってる」だとあそこか、ってなりますから。ちなみに石筍の間は、この上有住の白蓮洞の中にあり、名前のまま石筍がぽこぽこ生えた部屋状の空間です。こういったわかりやすい地点を足掛かりに脳内の洞窟マップを広げていきます。うまくいきません。
上有住の洞窟は広いので、何班かに分かれ各自で行動するのですが、私が主に参加した迷路班では「迷路」とよばれる枝分かれしまくりの難儀なエリアを探検し、新々洞口という出入口から出る予定でした(入るのは新洞口から)。ところがこの新々洞口が見つからない。新洞口からあらゆる分かれ道をあたってみても全て玉砕。仕方なく外に出て新々洞口を探し、そちら側から新洞口のほうへ進もうとしました。新々洞口は見つかりました。しかしまたしても、今度は新洞口への道がわかりません。その日は撤収しました。ただ、このとき新洞口と新々洞口をつなぐ正解のルートを見つけてはいたことが後日わかりました。そのルートに入ろうとすると滑って落ちそうになる瞬間があり、とある班員が尻込みして徹底的に調べていなかったのです。その腑抜けはどいつでしょうね。私ですね。ともかく、迷路は解かれました。といっても、別ルートもたくさんあるので完全制覇したわけではないですが。
いろんな分かれ道に入ってみる作業(アタック)は、上述のように目的のある場合もあればないときもあります。迷路はアタックチャンスだらけです(だからこそ迷路)。そして多くがトラップです。今回の合宿でも、新しい道を見つけたかと意気揚々と進軍したら元の場所に吐き出されたり、通ったことのない道をずうっと進んでいたらずいぶん前に通過したところに舞い戻ったりもしました。とっても変な気分になります。頭では道が曲がってたんだなとわかりますが、感覚的にはどうして前に進んでたのにここに戻ってくるんだろうと思えてしまいます。この迷い込んだ感にワクワクするかイライラするかはあなた次第。
上有住には迷路やエイリアンなどのエリアを含む巨大な白蓮洞や、それよりはやや小規模なその他の洞窟があり、活動し放題なので基本長く滞在します。今回も前半戦2日間に対し上有住では6日間。ゆったりと活動できました。全く関係ありませんが活動終了後ソチオリンピック観てました。皆家では観ないらしいですがドハマりしてました。雪国岩手の魔力でしょうか。
以上、移動日も含めれば10日間の岩手合宿でした。
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