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執筆者の写真地底研究部

2021年ちょうちん穴


Mくん

 7月4日、日帰りで都内のちょうちん穴に行って来ました。都内と言っても決して都会ではなく、群馬県の飛び地と悪名高い八王子より更に西の奥多摩に位置する洞窟です。

近頃は御時世もありどこのサークルも(一部のアウトローを除き)活動には難儀している事だと思いますが、我々地底研究部もその御多分に洩れず洞窟に入ることが出来ない期間が続き、先輩方は恐らく脱洞窟の禁断症状でのたうち回ったことでしょう。

 私はというと入学してから一度も洞窟に入っていなかったので、最早自分が入ったサークルがケイビングサークルだったかジュールヴェルヌ研究会だったか忘れかけていました。とにかく私にとっては初めての入洞だったのです。洞窟に足を踏み入れる前の段階での私のコンディションは良いとは言えませんでした。なにせ二時間ほどしか眠れなかったのです。遠足の前日に眠れない、というのは子供だから許される事だとおっしゃるかも知れません。しかし今回は洞窟です。遠足で行くところなんてせいぜい山の上程度のものですが、今回は文字通り「山の中」に入る訳ですから緊張するのも止むなしでしょう。

 ところで、洞窟の入り口は山にあるので当然アクセスが良いわけではありません。奥多摩駅という僻地の駅から、バスで更に僻地へ向かいます。そしてそこから更に徒歩で山を少し登った僻地に入り口があるのです。この山を登るというのが意外と長いプロセスで、睡眠不足の私には随分こたえました。しかも私は奥多摩駅で目覚ましにタバコを吸ってしまっていたため尚更酷でした。

 坂道を上りきり、準備やあれやこれが全て終わり班に分かれて洞窟の入り口に向かった時、私は自分の認識の甘さに気付きました。

そもそも洞窟の入り口に向かう段階で流れの激しい川にかかった少し滑る吊り橋を渡るのです。しかも合図を送って一人ずつ。「あ、これガチだ。」と私は思いました。全然死にうるところに来たのだ、とも。私がふざけて橋の上で踊り回ればあっという間に転落して川に落ちたでしょう。それほど深くはなかったですが頭を打つには十分な高さでした。勿論ふざけるつもりなどありませんでしたが、大学のサークルだし無事故と言っていたからそれほど危なくは無いのだろうとどこか無意識のうちにタカを括っていたのでしょう。洞窟の入り口の前に着いた時、私は恐怖と興奮が入り混じった感情を味わいました。

 ジェットコースターが滑り落ちる直前、頂上まで登っていくときのあの感覚を味わいました。ここに来た事を後悔はしないが、本能が引き返そうと喚き立てる、あの感覚です。多くの場合、レールを登り切った後には楽しい事が待っているのですが。なにせ洞窟の入り口までの道は、道というより崖でした。登ってみれば大したことはありませんでしたが、突然そこを登ると告げられた事に少なからず動揺し、いい足場をすぐには見つけられませんでした。

 なんとか上まで上り、順番に洞窟に入って行くのですが、この入り口も私が想像していたよりかなり狭く本当に人一人が通れる穴程度の幅しかありませんでした。しかしその穴にすっぽりと入った途端、入るものを歓迎しないその形状とは相反するような心地よさに包まれました。なにせ涼しいのです。しかも壁のどこを見ても湿っている。湿度が高いのに涼しいという感覚は少し珍しいし、洞窟特有の好きなところを早速見つけたと思いました。洞窟の中を進むのもなかなか良いものでした。私は子供の頃ベッドと壁の隙間が好きでしたし、よく道では無いところを歩いていました。根本的に狭いところも道なき道も好きなのです。ですから洞窟の通路はとても私好みでした。泥が体につくのも不思議なほど気になりませんでした。何故かは分かりませんがきっと誰もが洞窟に入るとどうでも良くなるのではないかと思います。通路を抜けて少しひらけた空間に出ると、記念撮影をしました。ハート型の穴が空いた岩があるので、顔ハメパネルの要領で写真を撮ります。

 しかし私は岩の形より洞窟の壁の美しさに見入ってしまいました。洞窟の壁には水滴が無数に着いており、それが光を反射してキラキラ光ります。遠目に見ると金色の壁のように見えるその光景も私は好きでした。先輩に「往復するコースの場合、帰り道は行きと景色が違うからたまに振り返るといい」と言われて後ろを振り返ってみると、帰り道が全く見えない事に驚きました。岩肌はどこも同じに見えて、穴がどこにあるのかすら見落としてしまいそうなところがざらにあります。勿論ちゃんと覗き込めばそこに穴は有るのですが、洞窟の中は岩だらけ、故に死角だらけです。洞内地図の重要性と、同行したK先輩がいかに優れたナビゲーション技術を持っているかがよく分かりました。

 さて、洞内ではチーム行動なので後続を待つという時間があるのですが、そんな時先輩が「ライトを消してみな」と私に言いました。言われた通りにすると、完全な闇が訪れます。完全な闇、と言葉で書いてもあの感覚を100%伝える事は難しいでしょう。詳しく書こうかとも思いましたがやめておきます。是非自分で味わって欲しいです。私はあの時間を一生忘れることが出来ないでしょう。そんな長かったような短かったような時間も終わり、いくつかの難所を這いずって超え、やっと外に出てきました。私はほんの少し出たく無い気持ちをかかえながら車に戻り着替えを済ませました。これで私の洞窟探検の感想は終わりです。


 今回の活動で最も印象に残った洞窟を中心に据えて書きましたが、地底研究部の先輩方についても一言。皆さん良識と個性を併せ持った素晴らしい方々です。特に部長を含めた三年生の皆さんは対面活動が出来ない中でも我々新入生を楽しませ、洞窟に入る準備を整える為に沢山努力をして下さりました。足を向けて寝られない、頭が上がらないというのはこの事です。もしまた合宿にいける御時世にもどれば、先輩方には土下寝の姿勢で眠ろうと思います。


今回の活動は2019年以来、やっとできた活動でした。Mくんの他にもケイバーデビューしたIくん、Iさん、Nくんにもコメントをもらいました!


Iくん

 今回私は2年生ながらコロナが影響で初めての洞窟探検になりました。現地では雨が降っておりましたのでレインコートが役に立ちました。洞窟探検では狭い穴が多かったので足が引っかかったりしてとても大変でした。しかし先輩のアドバイスなどでクリアでき、無事洞窟から出られました。個人的な感想としては腕などが攣ってしまっていたので適度な筋トレや握力も必要だと思いました。しかし普段生活しては経験できない事であるのでとても面白かったです。


Iさん

 とにかく楽しかったです。コロナで遠出する機会もなかったので普段いかないところに行くだけで興奮しました。車から洞窟に入るまでの道のりも結構冒険でした。川にかかる橋を渡ったり山道を登ったりしました。ちょうちん穴の入り口に入るところでもクライミングをしました。洞窟内は思ったよりひんやりして少し肌寒いくらいでした。全身を使って岩を登ったり間をくぐり抜けたりして泥だらけになりました。途中やばいと思うことも何度かありましたが、先輩方のおかげで無事に洞窟を出ることができました。本当に先輩方はすごいと思いました。また洞窟に行きたいです。


Nくん

 奥多摩のちょうちん穴に行きました。昨年入部したもののコロナのせいで活動が制限されていましたから、洞窟に入るのは今回が初めてです。思ったよりも狭い入口。ライト消せば暗闇。狭洞で試行錯誤。登るときは三点確保。これぞまさに非日常。昔読んだマーク・トウェインの「トム・ソーヤーの冒険」を連想しました。観光用の洞窟では味わうことのできない刺激的な体験でした。

また洞窟に入りたい。

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